は六月近い強雨の来る中でも隣家の伏見屋へ走って行って言った。
「伊之助さん、君の方で二日ばかりの分を立て替えてください。四十五両ばかりの雇い賃を払わなけりゃならない。」
 半蔵も、伊之助も熱い汗を流しつづけた。公儀御書院番を送ったあとには、大坂|御番頭《ごばんがしら》の松平|兵部少輔《ひょうぶしょうゆう》と肥前平戸《ひぜんひらど》の藩主とを同日に迎えた。この宿場では、定助郷《じょうすけごう》設置の嘆願のために蓬莱屋《ほうらいや》新七を江戸に送ったばかりで、参覲交代制度の変革以来に起こって来た街道の混雑を整理する暇《いとま》もなかったくらいである。十|挺《ちょう》の鉄砲を行列の先に立て、四挺の剣付き鉄砲で前後を護《まも》られた大坂御番頭の一行が本陣の前で駕籠《かご》を休めて行くと聞いた時は、半蔵は大急ぎで会所から自分の部屋《へや》に帰った。麻※[#「ころもへん+上」、第4水準2−88−9]※[#「ころもへん+下」、第4水準2−88−10]《あさがみしも》をお民に出させて着た。そして父の駅長時代と同じような御番頭の駕籠に近く挨拶《あいさつ》に行った。彼は父と同じように軽く袴《はかま》の股立
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