終
[#改丁]
改版『夜明け前』第一部の後に
この作、昭和四年に起稿し、同六年に第一部を書き終わったものであるが、なにしろ作の内容が過去の時代を探り求めるような性質のものであり、これを著作するためにも多くの年月を要したから、あとになって省きたいと思うところもでき、いろいろ自分の気づかなかった誤りに気づくということも起こって来た。
そんなわけで、最初これを一巻の書物にまとめる時すでに原稿の訂正を行なったのであるが、その後も版を重ねるにつれて、なお、幾多の改むべき個処を見いだした。今回の改版を機会に、さらに第一部の訂正を思い立ったのも、心に安んじられないかずかずの誤りを除きたいと願うからであった。そういうわたしなぞが過去の事物を探り求める方法というものも実際狭い範囲に限られていて、真に考証の正確を期することは自分らの手の届かないところにある。せめて知らないことは知らないとし、改むべきことは改めて、それをもって世の識者らへの答えにかえたい。この作最初に年四回分載の形で『中央公論』誌上に発表した当時から、なにかと注意してよこしてくれた未知の諸君の厚意に対しても深く感謝する。
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