れたもので、それらの一行がこの宿場に到着するごとに、本陣の玄関のところには必ず陣中のような幕が張り回される。大名以外には、公卿《くげ》、公役、それに武士のみがここへ来て宿泊し、休息することを許されているのだ。こんな人たちのために屋敷を用意し、部屋部屋を貸し与えるのが本陣としての青山の家業で、それには相応な心づかいがいる。前もって宿割《しゅくわり》の役人を迎え、御宿札《おやどふだ》というもののほかに関所を通過する送り荷の御鑑札を渡され、畳表を新しくするとか障子を張り替えるとか、時には壁を塗り替えるとかして、権威ある人々を待たねばならない。屏風《びょうぶ》何|双《そう》、手燭《てしょく》何|挺《ちょう》、燭台何挺、火鉢《ひばち》何個、煙草盆《たばこぼん》何個、草履《ぞうり》何足、幕何張、それに供の衆何十人前の膳飯《ぜんぱん》の用意をも忘れてはならない。どうして、旅人を親切にもてなす心なしに、これが勤まる家業ではないのだ。
 そんなら、問屋は何をしなければならないところか。半蔵の家に付属する問屋場なぞは、明らかに本陣と同じ意匠のもとにあるもので、主として武家に必要な米穀、食糧、武器、その他の
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