に移った。勝重は松薪《まつまき》を加えたり、ボヤを折りくべたりして、炉の火をさかんにする。茶屋の亭主は客のために何かあたたかいものをと言って、串魚《くしうお》なぞを煮るしたくを始めていた。
「とにかく、半蔵さん、」と香蔵は語気を改めて言い出した。「建武中興でなしに、神武創業にまでこの復古を持って行かれたことは、意外でしたね。そりゃ機運は動いていましたさ。しかし、ここまで出て来るには十年は待たなけりゃなるまいかと思っていましたよ。」
「結局、今の時世が求めるものは何か、ということなんですね。」
「まあ、だれがこんな意見を岩倉公あたりの耳にささやいたかなんて、そんな詮索《せんさく》はしないがいい。ほら、半蔵さんに貸してあげた写本さ。あれを書いた人の言い草じゃないが、草叢《くさむら》の中が発起です――それでたくさんです。」
「そう言えば、香蔵さん、あの鉄胤《かねたね》先生もほんとうに黙っていらっしゃる、そうわたしは思い思いしました。今になって見ると、やっぱりあの先生は働いていたんですね。暮田正香なぞも、まあ見ていてくれたまえなんて、そんなことを言って京都へ立って行きましたっけ。こういう日が来
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