たぶれたと見えて、きょうはまだだれも出て来ません。」
 そう言って半蔵は会所の店座敷へ寿平次を誘い入れた。二人《ふたり》の話は互いの激しい疲労をねぎらうことから、毎日のように目の前を通り過ぎた諸団体のことに落ちて行った。
 半蔵は言った。
「あの水戸浪士が通った時から見ると、隔世の感がありますね。もうあんな鎧兜《よろいかぶと》や黒い竪烏帽子《たてえぼし》は見られませんね。」
「一切の変わる時がやって来たんでしょう。」と寿平次もそれを受けて、「――武器でも武人の服装でも。」
「まあ、長州征伐がそれを早めたとも言えましょうね。」
「しかし、半蔵さん、征討軍の鉄砲や大筒《おおづつ》は古風で役に立たなかったそうですね。なんでも、長防の連中は農兵までが残らず西洋の新式な兵器で、寄せ手のものはポンポン撃たれてしまったと言うじゃありませんか。あのミニエール銃というやつは、あれはイギリスが長州に供給したんだそうですね。国情に疑惑があらばいくらでも尋問してもらおう、直接に外国から兵器を供給された覚えはないなんて、そんなに長防の連中が大きく出たところで、後方《うしろ》に薩摩《さつま》やイギリスがついていて
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