が、そのかわり綿密で慎み深く、半蔵にとってのよい相談相手である。その時、伊之助は宿勘定仕訳帳を取り出して、それを半蔵の前にひろげて見せた。包み隠しない宿方やり繰りの全景がそこにある。宿方の入金としては、年内人馬賃銭の内より宿助成としての刎銭《はねせん》何ほどということから、お年貢《ねんぐ》の高割《たかわり》として取り集めの分何ほど、ずっと以前に木曾谷中に許された刎銭積み金の利息より手助け村および御伝馬その他への割り渡しを差し引きたる残り何ほど、木曾谷には古い歴史のある御切り替え手形|頂戴金《ちょうだいきん》のうち御伝馬その他の諸役への割り渡しを差し引きたる残り何ほどとそこに記《しる》してある。支払いの分としては、御用御通行そのほか込み合いの節の人馬雇い銭、御用の諸家休泊年内|旅籠《はたご》の不足銭、問屋場の帳付けと馬指《うまさし》および人足指《にんそくざし》と定使《じょうづか》いらへの給料、宿駕籠《しゅくかご》の買い入れ代、助郷人馬への配当、高札場ならびに道路の修繕費、それに問屋場の維持に要する諸雑費というふうに。七か年を平均した帳尻《ちょうじり》を見ると、入金二百三十六両三分、銭六貫
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