薨去《こうきょ》後の混雑の際では採用されそうもない。やがて大坂から公儀衆が帰東の通行も追い追いと迫って来る。急げとばかり、半蔵は宿相続お救い願いの草稿を作りにかかった。
 草稿はできた。彼はそれを隣家の伏見屋へ持って行った。本陣の家から見れば一段と高い石垣《いしがき》の位置にある明るい静かな二階で、彼はそれを伊之助と二人《ふたり》で読んで見た。
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  宿相続お救い願い
    恐れながら書付をもって嘆願奉り候《そうろう》御事
「宿方《しゅくがた》の儀は、当街道筋まれなる小宿にて、お定めの人足二十五人役の儀も隣郷山口湯舟沢両村より相勤め候ほどの宿柄《しゅくがら》、外宿同様お継立《つぎた》てそのほか往還御役相勤め候儀につき、自然困窮に罷《まか》りなり、就中《なかんずく》去る天保《てんぽう》四|巳年《みどし》、同七|申年《さるどし》再度の凶年にて死亡離散等の数多くこれあり、宿役相勤めがたきありさまに罷《まか》りなり候えども、従来浅からざる御縁故をもって種々御尽力を仰ぎ、おかげにていかようにも宿相続|仕《つかまつ》り来たり候ところ、元来|嶮岨《けんそ》の瘠《や》せ地《ち》
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