とを感じて来た。彼はそれを尾州家の態度からも感じて来た。しかし、どんな崩壊が先の方に待っているにもせよ、彼は一日たりとも街道の世話を怠ることはできない。同時に、この困窮疲弊からも宿場を護《まも》らねばならない。
その時になって見ると、馬籠の宿場そのものの維持も容易ではなくなって来た。彼は伊之助その他の宿役人とも相談の上、この際、一切をぶちまけて、領主たる尾州家に宿相続救助の願書を差し出そうと決心した。
「まあ、お辞儀をしてかかるよりほかにしかたがありません。では、宿相続のお救い願いはわたしが書きましょう。宿勘定の仕訳帳《しわけちょう》は伊之助さんに頼みますよ。先ごろ名古屋の方へ行った時に、わたしはこの話を持ち出して見ました。尾州藩の人が言うには、奉行所あてに願書を出すがいい、どうせ藩でも足りない、しかし足りないついでになんとかしようじゃないか――そう言ってくれましたよ。」
いったいなら、こんな願書は江戸の道中奉行へ差し出すべきであった。それを尾州藩の方で引き取って、届くだけは世話しようと言うところにも、時の推し移りがあらわれていた。たといこれを江戸へ持ち出して見たところで、家茂公|
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