光っていることを忘れてはならない。山村の旦那《だんな》様は尾州の代官とは言っても、木曾街道要害の地たる福島の関所を幕府から預かっている深い縁故から、必ずしも尾州藩と歩調を同じくする人ではなく、むしろ徳川直属の旗本をもって自ら任じていることを忘れてはならない。往昔《むかし》、関ヶ原の戦いに東山道の先導となって徳川家に忠勤をぬきんでた山村氏の歴史を考えて見ても、それがわかる。平田|篤胤《あつたね》没後の門人が、福島の旦那様によろこばれるかよろこばれないかは言わずと知れたことであって、その地方の関係から言っても、馬籠の庄屋としての半蔵には中津川の景蔵《けいぞう》や香蔵《こうぞう》のような自由がない。どんな姿を変えた探偵《たんてい》が平田門人らの行動を注意していまいものでもない。おまけに、ここは街道だからで。
「壁にも耳のある世の中だぞ。まあ、半蔵にもよほど気をつけてもらわにゃならん。」と吉左衛門が言う。
「そんなら、あなた、こうするといい。」とおまんは思いついたように、「岩村には吾家《うち》の親類もありますからね。半蔵の留守中に、もし人が尋ねましたら、美濃《みの》の親類までまいりました、そう
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