るところへ戻《もど》って来て言った。
「この節は、早飛脚の置いて行く話も当てにならなくなりました。なんですか、わたしはろくろく仕事も手につきません。一つ名古屋まで行って、西の方の様子を突きとめて来たいと思います。どうでしょう、お父《とっ》さんやお母《っか》さんにしばらくお留守居を願えますまいか。」
「まあ、待てよ、みんな寝ころんで話そうじゃないか。」とその時、吉左衛門が言い出した。「半蔵はそこへ足でも伸ばせよ。おまん、お前も横になったら、どうだい。こういう相談は寝ながらにかぎる。」
旧暦七月の晩のことで、おまんは次ぎの部屋の方へ行燈《あんどん》を持ち運び、燈火《あかり》を遠くして来て、吉左衛門のそばに腰を延ばした。他人をまぜずの親子ぎりだ。三人思い思いに横になって見ると、薄暗いところでも咄《はなし》は見える。それに、余分親しみもある。
「半蔵、」と吉左衛門は寝ながら頬杖《ほおづえ》をついて、言葉を続けた。「お前も知ってるとおり、とかく人の口はうるさいし、本陣親子のものに怠りがあると言われては、御先祖さまに対しても申しわけがない。実はこの二、三年来というもの、お前が家を捨てて出て行
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