いる。万福寺での墓掃除からくたびれて帰ったという父を見ると、半蔵も名古屋行きのことをすぐにそこへ切り出しかねた。
「お母《っか》さん――どれ、わたしが一つかわりましょう。」
 と彼はおまんに言って、父の背後《うしろ》の方へ立って行こうとした。
「や、半蔵も按摩《あんま》さんをやってくれるか。肩はもうたくさんだぞ。そんなら、足を頼もう。」
 吉左衛門はとかく不自由でいる右の足を半蔵の前に投げ出して見せた。中風を煩《わずら》ったあげくの痕跡《こんせき》がまだそこに残っている。馬籠の駅長時代には百里の道を平気で踏んだほどの健脚とも思われないような、変わり果てた父の脹脛《ふくらはぎ》が、その時半蔵の手に触れた。かつて隆起した筋肉の勁《つよ》さなぞは探《さが》したくもない。膝《ひざ》から足の甲へかけての骨もとがって来ている。
「まあ、お父《とっ》さんはこんな冷たい足をしているんですか。」
 半蔵は話し話し、温暖《あたた》かい血の気が感じられるまで根気に父の足をなでさすっていた。先年、彼が父の病を祷《いの》るために御嶽山《おんたけさん》の方へ出かけたころから見ると、父も次第に健康を回復したが、しか
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