おも》って見た。
深い秋雨はなかなかやみそうもない。大目付に随《つ》いて来た家来の衆はいずれもひどく疲れが出たというふうで、部屋の片すみに高いびきだ。半蔵は清助を相手に村方の用事なぞを済まして置いて、また客人を上段の間に見に行こうとした。心にかかる京大坂の方の様子も聞きたくて、北側の廊下を回って行って見た。思いがけなくも、彼はその隠れた部屋の内に、激しくすすり泣く客人を見つけた。
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第十二章
一
「お父《とっ》さんは。」
一日の勤めを終わって庄屋《しょうや》らしい袴《はかま》を脱いだ半蔵は、父|吉左衛門《きちざえもん》のことを妻のお民にたずねた。
「お民、ひょっとするとおれは急に思い立って、名古屋まで行って来るかもしれないぜ。もし出かけるようだったら、留守を頼むよ。お父《とっ》さんやお母《っか》さんにもよく頼んで行く――なんだか西の方のことが心配になって来た。」
とまた彼は言って妻の顔を見た。半蔵夫婦の間にはお夏《なつ》という女の子も生まれたが、わずか六十日ばかりでその四番目の子供は亡《な》くなったころだ。お民の顔色もまだ青ざめている。
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