う関所番が切腹のうわさは、半蔵らにとってまだ実に生々《なまなま》しかった。


 蘭《あららぎ》から道は二つに分かれる。右は清内路に続き、左は広瀬、大平《おおだいら》に続いている。半蔵らはその左の方の道を取った。時には樅《もみ》、檜木《ひのき》、杉《すぎ》などの暗い木立ちの間に出、時には栗《くり》、その他の枯れがれな雑木の間の道にも出た。そして越えて来た蘭川の谷から広瀬の村までを後方に振り返って見ることのできるような木曾峠の上の位置に出た。枝と枝を交えた常磐木《ときわぎ》がささえる雪は恐ろしい音を立てて、半蔵らが踏んで行く路傍に崩《くず》れ落ちた。黒い木、白い雪の傾斜――一同の目にあるものは、ところまだらにあらわれている冬の山々の肌《はだ》だった。
 昼すこし過ぎに半蔵らは大平峠の上にある小さな村に着いた。旅するものはもとより、荷をつけて中津川と飯田の間を往復する馬方なぞの必ず立ち寄る休み茶屋がそこにある。まず笠《かさ》を脱いで炉ばたに足を休めようとしたのは景蔵だ。香蔵も半蔵も草鞋《わらじ》ばきのままそのそばにふん込《ご》んで、雪にぬれた足袋《たび》の先をあたためようとした。
「どれ、
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