らく沈黙が続いた。
「半蔵さん。攘夷論がやかましくなって来たそもそもは、あれはいつごろだったでしょう。ほら、幕府の大官が外国商人と結託してるの、英国公使に愛妾《あいしょう》をくれたのッて、やかましく言われた時がありましたっけね。」
「そりゃ、尊王攘夷の大争いにだって、利害関係はついて回る。横浜開港以来の影響はだれだって考えて来たことですからね。でも、尊攘と言えば、一種の宗教運動に似たもので、成敗利害の外にある心持ちから動いて来たものじゃありますまいか。」
「今日《こんにち》まではそうでしょうがね。しかし、これから先はどうありましょうかサ。」
「まあ、西の方へ行って見たまえ。公卿でも、武士でも、驚くほど実際的ですよ。水戸の人たちのように、ああ物事にこだわっていませんよ。」
「いや、京都へ行って帰って来てから、君らの話まで違って来た。」
 こんな話も出た。
 その夜、半蔵は家のものに言い付けて二人の友だちの寝床を店座敷に敷かせ、自分も同じように枕《まくら》を並べて、また寝ながら語りつづけた。近く中津川を去って国学者に縁故の深い伊勢《いせ》地方へ晩年を送りに行った旧師宮川寛斎のうわさ、江戸の
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