てね、村じゅう総がかりでやることにしました。みんな手分けをして、出かけています。わたしも今、一息入れているところなんです。」
「そう言えば、今度は飯田でもよっぽど平田の御門人にお礼を言っていい。君たちのお仲間もなかなかやる。」
「平田門人もいくらか寿平次さんに認められたわけですかね。」
 その時、宿泊人数の割り当てに村方へ出歩いていた宿役人仲間も帰って来て、そこへ顔を見せる。年寄役の伊之助は荒町《あらまち》から。問屋九郎兵衛は峠から。馬籠ではたいがいの家が浪士の宿をすることになって、万福寺あたりでも引き受けられるだけ引き受ける。本陣としての半蔵の家はもとより、隣家の伊之助方でも向こう側の隠宅まで御用宿ということになり同勢二十一人の宿泊の用意を引き受けた。
「半蔵さん、それじゃわたしは失礼します。都合さえついたら、あす出直して来ます。」
 寿平次はこっそりやって来て、またこっそり妻籠の方へ帰って行った。
 にわかに宿内の光景も変わりつつあった。千余人からの浪士の同勢が梨子野峠《なしのとうげ》を登って来ることが知れると、在方《ざいかた》へ逃げ去るものがある。諸道具を土蔵に入れるものがある。
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