としかけたら、たとえ多人数が押し寄せて来ても右の一手で何ほどか防ぎ止めることができよう、そのうちには追い追い味方の人数も出張するであろう、物頭はその用意のために雨中を奔走した。手を分けてそれぞれ下知《げじ》を伝えた。それを済ましたころにはもう昼時刻だ。物頭が樋橋《といはし》まで峠を降りて昼飯を認《したた》めていると、追い追いと人足も集まって来た。
諏訪城への注進の御使番は間もなく引き返して来て、いよいよ人数の出張があることを告げた。そのうちに二十八人の番士と十九人の砲隊士の一隊が諏訪から到着した。別に二十九人の銃隊士の出張をも見た。大砲二百目|玉筒《たまづつ》二|挺《ちょう》、百目玉筒二挺、西洋流十一寸半も来た。その時、諏訪から出張した藩士が樋橋《といはし》上の砥沢口《とざわぐち》というところで防戦のことに城中の評議決定の旨《むね》を物頭に告げた。東餅屋、西餅屋は敵の足だまりとなる恐れもあるから、代官所へ申し渡してあるように両餅屋とも焼き払う、桟《かけはし》も取り払う、橋々は切り落とす、そんな話があって、一隊の兵と人足らは峠の上に向かった。
ちょうど松本藩主|松平丹波守《まつだいら
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