のお達しが諏訪藩に届いた翌日には、江戸から表立ったお書付が諸藩へ一斉に伝達せられた。武蔵《むさし》、上野《こうずけ》、下野《しもつけ》、甲斐《かい》、信濃《しなの》の諸国に領地のある諸大名はもとより、相模《さがみ》、遠江《とおとうみ》、駿河《するが》の諸大名まで皆そのお書付を受けた。それはかなり厳重な内容のもので、筑波《つくば》辺に屯集《とんしゅう》した賊徒どものうち甲州路または中仙道《なかせんどう》方面へ多人数の脱走者が落ち行くやに相聞こえるから、すみやかに手はずして見かけ次第もらさず討《う》ち取れという意味のことが認《したた》めてあり、万一討ちもらしたら他領までも付け入って討ち取るように、それを等閑《なおざり》にしたらきっと御沙汰《ごさた》があるであろうという意味のことも書き添えてあった。同時に、幕府では三河《みかわ》、尾張《おわり》、伊勢《いせ》、近江《おうみ》、若狭《わかさ》、飛騨《ひだ》、伊賀《いが》、越後《えちご》に領地のある諸大名にまで別のお書付を回し、筑波辺の賊徒どものうちには所々へ散乱するやにも相聞こえるから、めいめいの領分はもとより、付近までも手はずをして置いて、怪
前へ 次へ
全434ページ中170ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング