られて行った先は、町奉行所だ。厳重な取り調べがあった。証拠となるべきものはなかったが、二人とも小人目付《こびとめつけ》に引き渡された。ちょうど水戸藩では佐幕派の領袖《りょうしゅう》市川三左衛門《いちかわさんざえもん》が得意の時代で、尊攘派征伐のために筑波《つくば》出陣の日を迎えた。邸内は雑沓《ざっとう》して、侍たちについた番兵もわずかに二人のみであった。夕方が来た。囚《とら》われとなった連れの侍は仲間にささやいて言う。自分はかの反対党に敵視せらるること久しいもので、もしこのままにいたら斬《き》られることは確かである、彼らのために死ぬよりもむしろ番兵を斬りたおして逃げられるだけ逃げて見ようと思うが、どうだと。それを聞いた一人の方の侍はそれほど反対党から憎まれてもいなかったが、同じ囚われの身でありながら、行動を共にしないのは武士のなすべきことでないとの考えから、その夜の月の出ないうちに脱出しようと約束した。待て、番士に何の罪もない、これを斬るはよろしくない、一つ説いて見ようとその侍が言って、番士を一室に呼び入れた。聞くところによると水府は今非常な混乱に陥っている、これは国家危急の秋《とき》
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