せられる。あれじゃお役所の仕事も手につかないわけですね。」
「そう言えば、半蔵さん、江戸にはえらい話がありますよ。わたしは山村様のお屋敷にいる人たちから、神奈川奉行の組頭《くみがしら》が捕《つか》まえられた話を聞いて来ましたよ。どうして、君、これは聞き捨てにならない。その人は神奈川奉行の組頭だと言うんですから、ずいぶん身分のある人でしょうね。親類が長州の方にあって、まあ手紙をやったと想《おも》ってごらんなさい。親類へやるくらいですから普通の手紙でしょうが、ふとそれが探偵《たんてい》の手にはいったそうです。まことに穏やかでない御時節がらで、お互いに心配だ、どうか明君賢相が出てなんとか始末をつけてもらいたい、そういうことが書いてあったそうです。それを幕府のお役人が見て、何、天下が騒々しい、これは公方様《くぼうさま》を蔑《ないがし》ろにしたものだ、公方様以外に明君が出てほしいと言うなら、いわゆる謀反人《むほんにん》だということになって、組頭はすぐにお城の中で捕縛されてしまった。どうも、大変な話じゃありませんか。それから組頭が捕《つか》まえられると同時に家捜《やさが》しをされて、当人はそのまま
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