半蔵は連れと同じように旅の合羽《かっぱ》をぬいで、国から用意して来た麻の※[#「ころもへん+上」、第4水準2−88−9]※[#「ころもへん+下」、第4水準2−88−10]《かみしも》に着かえた。
「さあ、これから御奉行さまの前だ。」と贄川《にえがわ》の平助は用心深い目つきをしながら、半蔵の袖《そで》をひいた。「きょうは、うっかりした口はきけませんよ。半蔵さんはまだ若いから、何か言い出しそうで心配です。」
「わたしですか。わたしは平素《ふだん》から黙っていたい方ですから、そんなよけいなことはしゃべりませんよ。」
 その時、福島の幸兵衛も庄屋らしい袴《はかま》の紐《ひも》を結んでいたが、半分|串談《じょうだん》のような調子で、
「半蔵さんは平田の御門人だと言うから、余分に目をつけられますぜ。」
 と戯れた。
「いえ。」と半蔵は言った。「わたしは馬籠をたつ時に、家のものからもそんなことを言われて来ましたよ。でも、木曾十一宿の総代で呼び出されるものをつかまえて、まさか入牢《にゅうろう》を申し付けるとも言いますまい。」
 幸兵衛も平助も笑った。三人ともしたくができた。そこで出かけた。
 道中奉行
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