へんぴ》なところで、ろくな短冊《たんざく》もありませんが、何かわたしの家へも記念に残して置いていただきたい。」
 禰宜はその時、手をたたいて家のものを呼んだ。自分の子息《むすこ》をその部屋に連れて来させた。
「青山さん、これは八つになります。おそ生まれの八つですが、手習いなぞの好きな子です。ごらんのとおりな山の中で、よいお師匠さまも見当たらないでいます。どうかこれを御縁故に、ちょくちょく王滝へもお出かけを願いたい。この子にも、本でも教えてやっていただきたい。」
 禰宜はこの調子だ。さらに言葉をついで、
「福島からここまでは五里と申しておりますが、正味四里半しかありません。青山さんは福島へはよく御出張でしょう。あの行人橋《ぎょうにんばし》から御嶽山道について常磐《ときわ》の渡しまでお歩きになれば、今度お越しになったと同じ道に落ち合います。この次ぎはぜひ、福島の方からお回りください。」
「えゝ。王滝は気に入りました。こんな仙郷《せんきょう》が木曾にあるかと思うようです。またおりを見てお邪魔にあがりますよ。わたしもこれでいそがしいからだですし、御承知の世の中ですから、この次ぎやって来られるの
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