宿の人に呼んでもらった村の髪結いが油じみた台箱をさげながら半蔵の部屋《へや》にはいって来た。ぐっすり半日ほど眠ったあとで、半蔵は参籠に乱れた髪を結い直してもらった。元結《もとゆい》に締められた頭には力が出た。気もはっきりして来た。そばにいる勝重を相手に、いろいろ将来の身の上の話なぞまで出るのも、こうした静かな禰宜の家なればこそだ。
「勝重さん、君もそう長くわたしのそばにはいられまいね。来年あたりは落合《おちあい》の方へ帰らにゃなるまいね。きっと家の方では、君の縁談が待っていましょう。」
「わたしはもっと勉強したいと思います。そんな話がありましたけれど、まだ早いからと言って断わりました。」
 勝重はそれを言うにも顔を紅《あか》らめる年ごろだ。そこへ禰宜が半蔵を見に来た。禰宜は半蔵のことを「青山さん」と呼ぶほどの親しみを見せるようになった。里宮参籠記念のお札、それに神饌《しんせん》の白米なぞを用意して来て、それを部屋の床の間に置いた。
「これは馬籠へお持ち帰りを願います。」と禰宜は言った。「それから一つお願いがあります。あの御神前へおあげになった歌は、結構に拝見しました。こんな辺鄙《
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