姿の男にあった。傘《からかさ》をさして、そこまで迎えに来た禰宜の子息《むすこ》だ。その辺には蓑笠《みのかさ》で雨をいとわず往来《ゆきき》する村の人たちもある。重い物を背負《しょ》い慣れて、山坂の多いところに平気で働くのは、木曾山中いたるところに見る図だ。
「オヤ、お帰りでございますか。さぞお疲れでございましょう。」
 禰宜の細君は半蔵を見て声をかけた。山登りの多くの人を扱い慣れていて、いろいろ彼をいたわってくれるのもこの細君だ。
「御参籠のあとでは、皆さまが食べ物に気をつけますよ。こんな山家で何もございませんけれど、芹粥《せりがゆ》を造って置きました。落とし味噌《みそ》にして焚《た》いて見ました。これが一番さっぱりしてよいかと思いますが、召し上がって見てください。」
 こんなことを言って、芹《せり》の香のする粥《かゆ》なぞを勧めてくれるのもこの細君だ。
 温暖《あたたか》い雨はしとしと降り続いていた。その一日はせめて王滝に逗留《とうりゅう》せよ、風呂《ふろ》にでもはいってからだを休めて行けという禰宜の言葉も、半蔵にはうれしかった。
「へい。床屋でございます。御用はこちらでございますか。
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