まにか浅黄色の襦袢《じゅばん》の襟《えり》のよく似合うような若衆姿になって来た。彼は綿密な性質で、服装《なりふり》なぞにあまりかまわない方の勉強家であるが、持って生まれた美しさは宿の人の目をひいた。かわるがわるこの少年をのぞきに来る若い娘たちのけはいはしても、そればかりは半蔵もどうすることもできなかった。
「勝重さん、君は、くたぶれたら横にでもなるさ。」
「お師匠さま、勝手にやりますよ。どうもお師匠さまの足の速いには、わたしも驚きましたよ。須原《すはら》から王滝まで、きょうの山道はかなり歩きでがありました。」
 間もなく勝重は高いびきだ。半蔵はひとり行燈《あんどん》の灯《ひ》を見つめて、長いこと机の前にすわっていた。大判の薄藍色《うすあいいろ》の表紙から、古代紫の糸で綴《と》じてある装幀《そうてい》まで、彼が好ましく思う意匠の本がその机の上にひろげてある。それは門人らの筆記になる平田篤胤の講本だ。王滝の宿であけて見たいと思って、馬籠を出る時に風呂敷包《ふろしきづつ》みの中に入れて来た上下二冊の『静の岩屋』だ。
 さびしく聞こえて来る夜の河《かわ》の音は、この半蔵の心を日ごろ精神の支柱と
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