った。
「それじゃ、御参籠《ごさんろう》はあすからとなさいますか。ここに来ている間、塩断《しおだ》ちをなさるかたがあり、五穀をお断ちになるかたがあり、精進潔斎《しょうじんけっさい》もいろいろです。火の気を一切おつかいにならないで、水でといた蕎麦粉《そばこ》に、果実《くだもの》ぐらいで済ませ、木食《もくじき》の行《ぎょう》をなさるかたもあります。まあ、三度の食は一度ぐらいになすって、なるべく六根《ろっこん》を清浄にして、雑念を防ぎさえすれば、それでいいわけですね。」
ようやく。そうだ、ようやく半蔵は騒ぎやすい心をおちつけるにいいような山里の中の山里とも言うべきところに身を置くことができた。王滝はことに夜の感じが深い。暗い谷底の方に燈火《あかり》のもれる民家、川の流れを中心にわき立つ夜の靄《もや》、すべてがひっそりとしていた。旧暦四月のおぼろ月のあるころに、この静かな森林地帯へやって来たことも、半蔵をよろこばせた。
半蔵が連れて来た勝重は、美濃落合の稲葉屋から内弟子《うちでし》として預かってからもはや三年になる。短い袴《はかま》に、前髪をとって、せっせと本を読んでいた勝重も、いつの
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