う難儀をしようと、そんなことにおかまいなしでいられるくらいなら、もともと何も心配することはなかったんです。」
妻籠の宿はずれのところまでついて来た寿平次とも別れて、さらに半蔵らは奥筋へと街道を進んだ。翌日は早く須原をたち、道を急いで、昼ごろには桟《かけはし》まで行った。雪解《ゆきげ》の水をあつめた木曾川は、渦《うず》を巻いて、無数の岩石の間に流れて来ている。休むにいい茶屋もある。鶯《うぐいす》も鳴く。王滝口への山道はその対岸にあった。御嶽登山をこころざすものはその道を取っても、越立《こしだち》、下条《しもじょう》、黒田なぞの山村を経て、常磐《ときわ》の渡しの付近に達することができた。
間もなく半蔵らは街道を離れて、山間《やまあい》に深い林をつくる谷に分け入った。檜《ひのき》、欅《けやき》にまじる雑木も芽吹きの時で、さわやかな緑が行く先によみがえっていた。王滝川はこの谷間を流れる木曾川の支流である。登り一里という沢渡峠《さわどとうげ》まで行くと、遙拝所《ようはいじょ》がその上にあって、麻利支天《まりしてん》から奥の院までの御嶽全山が遠く高く容《かたち》をあらわしていた。
「勝重さ
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