》行きとは、それでも御苦労さまだ。山はまだ雪で、登れますまいに。」
「えゝ、三合目までもむずかしい。王滝まで行って、あそこの里で二、三日|参籠《さんろう》して来ますよ。」
「馬籠のお父《とっ》さんはまだそんなですかい。君も心配ですね。そう言えば、半蔵さん、江戸の方の様子は君もお聞きでしたろう。」
「こんなことになるんじゃないかと思って、わたしは心配していました。」
「それさ。イギリスの軍艦が来て江戸は大騒ぎだそうですね。来月の八日とかが返答の期限だと言うじゃありませんか。これは結局、償金を払わせられることになりましょうね。むやみと攘夷《じょうい》なんてことを煽《あお》り立てるものがあるから、こんな目にあう。そりゃ攘夷党だって、国を憂えるところから動いているには相違ないでしょうが、しかしわたしにはあのお仲間の気が知れない。いったい、外交の問題と国内の政事をこんなに混同してしまってもいいものでしょうかね。」
「さあねえ。」
「半蔵さん、これでわたしが庄屋の家に生まれなかったら、今ごろは京都の方へでも飛んで行って、鎖港攘夷だなんて押し歩いているかもしれませんよ。街道がどうなろうと、みんながど
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