大学の前身)と改称される。江戸の講武所《こうぶしょ》における弓術や犬追物《いぬおうもの》なぞのけいこは廃されて、歩兵、騎兵、砲兵の三兵が設けられる。井伊大老在職の当時に退けられた人材はまたそれぞれの閑却された位置から身を起こしつつある。門閥と兵力とにすぐれた会津《あいづ》藩主松平|容保《かたもり》は、京都守護職の重大な任務を帯びて、新たにその任地へと向かいつつある。
時には、オランダ留学生派遣のうわさが夢のように半蔵の耳にはいる。二度も火災をこうむった江戸城建築のころは、まだ井伊大老在職の日で、老中水野越前守が造り残した数百万両の金銀の分銅《ふんどう》はその時に費やされたといわれ、公儀の御金庫《おかねぐら》はあれから全く底を払ったと言われる。それほど苦しい身代のやり繰りの中で、今度の新内閣がオランダまで新知識を求めさせにやるというその思い切った方針が、半蔵を驚かした。
ちょうど、父吉左衛門は家にいて、例の寛《くつろ》ぎの間《ま》にこもって、もはや退役の日のしたくなぞを始めていた。祖父半六は六十六歳まで宿役人を勤め、それから家督を譲って隠居したが、父は六十四歳でそれをするというふうに
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