いる。何かこの父を慰めるものはないか、と半蔵は思っているところへ、ちょうど人足四人持ちで、大きな籠《かご》を本陣の門内へかつぎ入れた宰領があった。
 宰領は半蔵の前に立って言った。
「旦那《だんな》、これは今度、公儀から越前様へ御拝領になった綿羊《めんよう》というものです。めずらしい獣です。わたしたちはこれを送り届けにまいる途中ですが、しばらくお宅の庭で休ませていただきたい。」
 江戸の方からそこへかつがれて来たのは、三|疋《びき》の綿羊だ。こんな木曾山の中へは初めて来たものだ。早速《さっそく》半蔵はお民を呼んで、表玄関の広い板の間に座蒲団《ざぶとん》を敷かせ、そこに父の席をつくった。
「みんな、おいで。」
 とおまんも孫たちを呼んだ。
「越前様の御拝領かい。」と言いながら、吉左衛門は奥の方から来てそこへ静かにすわった。「越前様といえば、五月の十一日にこの街道をお通りになったじゃないか。おれは寝ていてお目にもかからなかったが、今度政事総裁職になったのもあのお大名だね。」
 ちょっとしたことにも吉左衛門はそれをこの街道に結びつけて、諸大名の動きを読もうとする。
「あなたはそれだから、いけ
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