ない。」とおまんは言った。「病気する時には病気するがいいなんて自分で言っていながら、そう気をつかうからいけない。まあ、このやさしい羊の目を御覧なさい。」
街道では痲疹《はしか》の神を送ったあとで、あちこちに病人や死亡者を出した流行病の煩《わずら》いから、みんなようやく一息ついたところだ。その年の渋柿《しぶがき》の出来のうわさは出ても、京都と江戸の激しい争いなぞはどこにあるかというほど穏やかな日もさして来ている。宰領の連れて来た三疋の綿羊が籠《かご》の中で顔を寄せ、もぐもぐ鼻の先を動かしているのを見ると、動物の好きなお粂《くめ》や宗太は大騒ぎだ。持病の咳《せき》で引きこもりがちな金兵衛まで上の伏見屋からわざわざ見に出かけて来て、いつのまにか本陣の門前には多勢の人だかりがした。
「金兵衛さん、こういうめずらしい羊が日本に渡って来るようになったかと思うと、世の中も変わるはずですね。わたしは生まれて初めてこんな獣を見ます。」
と吉左衛門は言って、なんとなく秋めいた街道の空を心深げにながめていた。
「半蔵、まあ見てくれよ。おれの足はこういうものだよ。」
と言って、病み衰えた右の足を半蔵
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