情を抱《いだ》いて来たことすら、彼には実に不思議でならなかった。彼はひとり言って見た。
「まあ、神葬祭なぞは疑問だ。復古というようなことが、はたして今の時世に行なわれるものかどうかも疑問だ。どうも平田派のお仲間のする事には、何か矛盾がある。」


 まだ妹のお民が家に逗留《とうりゅう》していたので、寿平次は弓の道具を取りかたづけ、的もはずし、やがてそれをさげながら、自分の妻のお里《さと》や妹のいる方へ行って一緒になろうとした。裏庭から母屋《もや》の方へ引き返して行くと、店座敷のわきの板の間から、機《はた》を織る筬《おさ》の音が聞こえて来ている。
 寿平次の家も妻籠の御城山《おしろやま》のように古い。土地の言い伝えにも毎月三八の日には村市《むらいち》が立ったという昔の時代から続いて来ている青山の家だ。この家にふさわしいものの一つは、今のおばあさん(寿平次|兄妹《きょうだい》の祖母)が嫁に来る前からあったというほど古めかしく錆《さ》び黒ずんだ機《はた》の道具だ。深い窓に住むほど女らしいとされていたころのことで、お里やお民はその機《はた》の置いてあるところに集まって、近づいて来る御通行のおう
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