、直ちに入牢《にゅうろう》を仰せ付けられて、八沢《やさわ》送りとなった。福島からは別に差紙《さしがみ》が来て、年寄役付き添いの上、馬籠の庄屋に出頭せよとある。今は、半蔵も躊躇《ちゅうちょ》すべき時でない。
「お民、おれはお父《とっ》さんの名代《みょうだい》に、福島まで行って来る。」
 と妻に言って、彼は役所に出頭する時の袴《はかま》の用意なぞをさせた。自分でも着物を改めて、堅く帯をしめにかかった。


「どうも人気《にんき》が穏やかでない。」
 父、吉左衛門はそれを半蔵に言って、福島行きのしたくのできるのを待った。
 この父は自分の退役も近づいたという顔つきで、本陣の囲炉裏ばたに続いた寛《くつろ》ぎの間《ま》の方へ行って、その部屋《へや》の用箪笥《ようだんす》から馬籠湯舟沢両村の古い絵図なぞを取り出して来た。
「半蔵、これも一つの参考だ。」
 と言って子の前に置いた。

「双方入り合いの草刈り場所というものは、むずかしいよ。山論、山論で、そりゃ今までだってもずいぶんごたごたしたが、大抵は示談で済んで来たものだ。」
 とまた吉左衛門は軽く言って、早く不幸な入牢者を救えという意味を通わせた
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