若い。それでももう彼のそばには、お民のふところへ子供らしい手をさし入れて、乳房《ちぶさ》を探ろうとする宗太がいる。朴《ほお》の葉に包んでお民の与えた熱い塩結飯《しおむすび》をうまそうに頬張《ほおば》るような年ごろのお粂《くめ》がいる。
 半蔵は思い出したように、
「ごらん、吾家《うち》の阿爺《おやじ》はことしで勤続二十一年だ、見習いとして働いた年を入れると、実際は三十七、八年にもなるだろう。あれで祖父《おじい》さんもなかなか頑張《がんば》っていて、本陣庄屋の仕事を阿爺《おやじ》に任せていいとは容易に言わなかった。それほど大事を取る必要もあるんだね。おれなぞは、お前、十七の歳《とし》から見習いだぜ。しかし、おれはお前の兄さん(寿平次)のように事務の執れる人間じゃない。お大名を泊めた時の人数から、旅籠賃《はたごちん》がいくらで、燭台《しょくだい》が何本と事細かに書き留めて置くような、そういうことに適した人間じゃない――おれは、こんなばかな男だ。」
「どうしてそんなことを言うんでしょう。」
「だからさ。今からそれをお前に断わって置く。お前の兄さんもおもしろいことを言ったよ。庄屋としては民意を
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