しさは、半蔵らにもありし日のことを思い出させずには置かなかった。
「そうかなあ。自分らもあんなだったかなあ。わたしが弁当持ちで、宮川先生の家へ通い初めたのは、ちょうど今の勝重さんの年でしたよ。」
 と半蔵は友だちに言って見せた。
 そろそろ香蔵は中津川の家の方のことを心配し出した。強風強雨が来たあとの様子が追い追いわかって見ると、荒町《あらまち》には風のために吹きつぶされた家もある。峠の村にも半つぶれの家があり、棟《むね》に打たれて即死した馬さえある。そこいらの畠《はたけ》の麦が残らず倒れたなぞは、風あたりの強い馬籠峠の上にしてもめずらしいことだ。
 おまんは店座敷へ来て、
「香蔵さん、お宅の方でも御心配なすっていらっしゃるでしょうが、きょうお帰し申したんじゃ、わたしどもが心配です。吾家《うち》の佐吉に風呂《ふろ》でも焚《た》かせますに、もう一日|御逗留《ごとうりゅう》なすってください。年寄りの言うことをきいてください。」
 と言って勧めた。この継母がはいって来ると、半蔵は急にすわり直した。おまんの前では、崩《くず》している膝《ひざ》でもすわり直すのが半蔵の癖のようになっていた。
「ご
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