るものの忌日がやって来るような日を迎えて見ると、亡《な》き梅田雲浜《うめだうんぴん》、吉田松陰、頼鴨崖《らいおうがい》なぞの記憶がまた眼前の青葉と共に世人の胸に活《い》き返って来る。半蔵や香蔵は平田篤胤没後の門人として、あの先輩から学び得た心を抱いて、互いに革新潮流の渦《うず》の中へ行こうとこころざしていた。
降りつづける五月の雨は友だちの足をとどめさせたばかりでなく、親しみを増させるなかだちともなった。半蔵には新たに一人《ひとり》の弟子ができて、今は住み込みでここ本陣に来ていることも香蔵をよろこばせた。隣宿落合の稲葉屋《いなばや》の子息《むすこ》、林|勝重《かつしげ》というのがその少年の名だ。学問する機運に促されてか、馬籠本陣へ通《かよ》って来る少年も多くある中で、勝重ほど末頼もしいものを見ない、と友だちに言って見せるのも半蔵だ。時には、勝重は勉強部屋の方から通って来て、半蔵と香蔵とが二人《ふたり》で話しつづけているところへ用をききに顔を出す。短い袴《はかま》、浅黄色《あさぎいろ》の襦袢《じゅばん》の襟《えり》、前髪をとった額越《ひたいご》しにこちらを見る少年らしい目つきの若々
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