として、その客間に足をとどめて行ったことが、ありありとそこにたどられる。半蔵はそんな隠れたところにある部屋《へや》を友だちにのぞかせて、目まぐるしい「時」の歩みをちょっと振り返って見る気になった。
その時、半蔵は唐紙《からかみ》のそばに立っていた。わざと友だちが上段の間の床に注意するのを待っていた。相州三浦《そうしゅうみうら》、横須賀在、公郷村《くごうむら》の方に住む山上七郎左衛門《やまがみしちろうざえもん》から旅の記念にと贈られた光琳《こうりん》の軸がその暗い壁のところに隠れていたのだ。
「香蔵さん、これがわたしの横須賀|土産《みやげ》ですよ。」
「そう言えば、君の話にはよく横須賀が出る。これを贈ったかたがその御本家なんですね。」
「妻籠《つまご》の本陣じゃ無銘の刀をもらう、わたしの家へはこの掛け物をもらって来ました。まったく、あの旅は忘れられない。あれから吾家《うち》へ帰って来た日は、わたしはもう別の人でしたよ――まあ、自分のつもりじゃ、全く新規な生活を始めましたよ。」
半日でも多く友だちを引き留めたくている半蔵には、その日の雨はやらずの雨と言ってよかった。彼はその足で、継母や
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