妻の仕事部屋となっている仲の間のわきの廊下を通りぬけて、もう一度店座敷の方に友だちの席をつくり直した。
「どれ、香蔵さんに一つわたしのまずい歌をお目にかけますか。」
 と言って半蔵が友だちの前に取り出したのは、時事を詠じた歌の草稿だ。まだ若々しい筆で書いて、人にも見せずにしまって置いてあるものだ。
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あめりかのどるを御国《みくに》のしろかねにひとしき品とさだめしや誰《たれ》
しろかねにかけておよばぬどるらるをひとしと思ひし人は誰ぞも
国つ物たかくうるともそのしろのいとやすかるを思ひはからで
百八十《ももやそ》の物のことごとたかくうりてわれを富ますとおもひけるかな
土のごと山と掘りくるどるらるに御国《みくに》のたからかへまく惜しも
どるらるにかふるも悲し神国《かみぐに》の人のいとなみ造れるものを
どるらるの品のさだめは大八島《おおやしま》国中《くぬち》あまねく問ふべかりしを
しろかねにいたくおとれるどるらるを知りてさておく世こそつたなき
国つ物足らずなりなばどるらるは山とつむとも何にかはせむ
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 これらの歌に「どる」とか、「どるらる」とかある
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