ッて、いかにもイギリス人の言いそうなことじゃありませんか。」
「先生。」と十一屋は膝《ひざ》を乗り出した。「わたしはまたこういう話を聞いたことがあります。こっちの女が歯を染めたり、眉《まゆ》を落としたりしているのを見ると、西洋人は非常にいやな気がするそうですね。ほんとうでしょうか。まあ、わたしたちから見ると、優しい風俗だと思いますがなあ。」
「気味悪く思うのはお互いでしょう。事情を知らない連中と来たら、いろいろなことをこじつけて、やれ幕府の上役のものは西洋人と結託しているの、なんのッて、悪口ばかり。鎖攘《さじょう》、鎖攘(鎖港攘夷の略)――あの声はどうです。わたしに言わせると、幕府が鎖攘を知らないどころか、あんまり早く鎖攘し過ぎてしまった。蕃書《ばんしょ》は禁じて読ませない、洋学者は遠ざけて近づけない、その方針をよいとしたばかりじゃありません、国内の人材まで鎖攘してしまった。御覧なさい、前には高橋作左衛門を鎖攘する。土生玄磧《はぶげんせき》を鎖攘する。後には渡辺華山《わたなべかざん》、高野長英《たかのちょうえい》を鎖攘する。その結果はと言うと、日本国じゅうを実に頑固《がんこ》なものにし
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