ちまいました。外国のことを言うのも恥だなんて思わせるようにまで――」
「先生、肉が煮えました。」
 と十一屋は瑞見の話をさえぎった。
 女中が白紙を一枚ずつ客へ配りに来た。肉を突ッついた箸《はし》はその紙に置いてもらいたいとの意味だ。煮えた牛鍋《ぎゅうなべ》は庭から縁側の上へ移された。奥の部屋《へや》に、牡丹屋の家の人たちがいる方では、障子《しょうじ》をあけひろげるやら、こもった空気を追い出すやらの物音が聞こえる。十一屋はそれを聞きつけて、
「女中さん、そう言ってください。今にこちらのお婆さんでも、おかみさんでも、このにおいをかぐと飛んで来るようになりますよッて。」
 十一屋の言い草だ。
「どれ、わたしも一つ薬食《くすりぐ》いとやるか。」
 と寛斎は言って、うまそうに煮えた肉のにおいをかいだ。好きな酒を前に、しばらく彼も一切を忘れていた。盃の相手には、こんな頼もしい人物も幕府方にあるかと思われるような客がいる。おまけに、初めて味わう肉もある。

       四

 当時、全国に浪《なみ》打つような幕府非難の声からすれば、横浜や函館の港を開いたことは幕府の大失策である。東西人種の相違、
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