ふなじるし》の旗を立てて、港の役人を乗せた船が外国船から漕《こ》ぎ帰って来た。そのあとから、二、三の艀《はしけ》が波に揺られながら岸の方へ近づいて来た。横浜とはどんなところかと内々想像して来たような目つきのもの、全く生《お》い立ちを異にし気質を異にしたようなもの、本国から来たもの、東洋の植民地の方から来たもの、それらの雑多な冒険家が無遠慮に海から陸《おか》へ上がって来た。いずれも生命《いのち》がけの西洋人ばかりだ。上陸するものの中にはまだ一人《ひとり》の婦人を見ない。中には、初めて日本の土を踏むと言いたそうに、連れの方を振り返るものもある。叔父《おじ》甥《おい》なぞの間柄かと見えて、迎えるものと迎えらるるものとが男同志互いに抱き合うのもある。その二人《ふたり》は、寛斎や瑞見の見ている前で、熱烈な頬《ほお》ずりをかわした。
瑞見はなかなかトボケた人で、この横浜を見に来たよりも、実は牛肉の試食に来たと白状する。こんな注文を出す客のことで、あちこち引っぱり回されるのは迷惑らしい上に、案内者側の寛斎の方でもなるべく日のあるうちに神奈川へ帰りたかった。いつでも日の傾きかけるのを見ると、寛斎
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