た。やがて、寛斎を顧みて、
「やっぱりよくできていますね。同じ汽船でも外国のはどこか違いますね。」
「喜多村先生のお供はかなわない。」とその時、十一屋の隠居が横槍《よこやり》を入れた。
「どうしてさ。」
「いつまででも船なぞをながめていらっしゃるから。」
「しかし、十一屋さん、早くわれわれの国でもああいうよい船を造りたいじゃありませんか。今じゃ薩州《さっしゅう》でも、土州《としゅう》でも、越前《えちぜん》でも、二、三|艘《そう》ぐらいの汽船を持っていますよ。それがみんな外国から買った船ばかりでさ。十一屋さんは昌平丸《しょうへいまる》という船のことをお聞きでしたろうか。あれは安政二年の夏に、薩州侯が三本マストの大船を一艘造らせて、それを献上したものでさ。幕府に三本マストの大船ができたのは、あれが初めてだと思います。ところが、どうでしょう。昌平丸を作る時分には、まだ螺旋釘《ねじくぎ》を使うことを知らない。まっすぐな釘《くぎ》ばかりで造ったもんですから、大風雨《おおあらし》の来た年に、品川沖でばらばらに解けてこわれてしまいました。」
「先生はなかなかくわしい。」
「函館の方にだって、二本マス
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