てある。そのそばには弟子たちが集まっている。馬籠本陣の子息《むすこ》がいる。中津川|和泉屋《いずみや》の子息がいる。中津川本陣の子息も来ている。それは十余年前に三人の弟子の顔のよくそろった彼の部屋《へや》の光景である。馬籠の青山半蔵、中津川の蜂谷《はちや》香蔵、同じ町の浅見景蔵――あの三人を寛斎が戯れに三蔵と呼んで見るのを楽しみにしたほど、彼のもとへ本を読みに通《かよ》って来たかずかずの若者の中でも、末頼もしく思った弟子たちである。ことに香蔵は彼が妻の弟にあたる親戚《しんせき》の間柄でもある。みんなどういう人になって行くかと見ている中にも、半蔵の一本気と正直さと来たら、一度これが自分らの行く道だと見さだめをつけたら、それを改めることも変えることもできないのが半蔵だ。
 考え続けて行くと、寛斎はそばにいない三人の弟子の前へ今の自分を持って行って、何か弁解せずにはいられないような矛盾した心持ちに打たれて来た。
「待てよ、いずれあの連中はおれの出稼《でかせ》ぎを疑問にしているに相違ない。」


「金銀|欲《ほ》しからずといふは、例の漢《から》やうの虚偽《いつわり》にぞありける。」
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