神奈川の連絡を取ることは、一切寛斎の手にまかせられた。

       二

 十一月を迎えるころには、寛斎は一人牡丹屋の裏二階に残った。
「なんだかおれは島流しにでもなったような気がする。」
 と寛斎は言って、時には孤立のあまり、海の見える神奈川台へ登りに行った。坂になった道を登れば神奈川台の一角に出られる。目にある横浜もさびしかった。あるところは半農半漁の村民を移住させた町であり、あるところは運上所《うんじょうしょ》(税関)を中心に掘立小屋《ほったてごや》の並んだ新開の一区域であり、あるところは埋め立てと繩張《なわば》りの始まったばかりのような畑と田圃《たんぼ》の中である。弁天の杜《もり》の向こうには、ところどころにぽつんぽつん立っている樹木が目につく。全体に湿っぽいところで、まだ新しい港の感じも浮かばない。
 長くは海もながめていられなくて、寛斎は逃げ帰るように自分の旅籠屋《はたごや》へ戻《もど》った。二階の窓で聞く鴉《からす》の声も港に近い空を思わせる。その声は郷里にある妻や、子や、やがては旧《ふる》い弟子《でし》たちの方へ彼の心を誘った。
 古い桐《きり》の机がある。本が置い
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