《ま》をおいては響き砕けていた。半蔵も寿平次もその裏山の上の位置から去りかねて、海を望みながら松林の間に立ちつくした。

       五

 異国――アメリカをもロシヤをも含めた広い意味でのヨーロッパ――シナでもなく朝鮮でもなくインドでもない異国に対するこの国の人の最初の印象は、決して後世から想像するような好ましいものではなかった。
 もし当時のいわゆる黒船、あるいは唐人船《とうじんぶね》が、二本の白旗をこの国の海岸に残して置いて行くような人を乗せて来なかったなら。もしその黒船が力に訴えても開国を促そうとするような人でなしに、真に平和修好の使節を乗せて来たなら。古来この国に住むものは、そう異邦から渡って来た人たちを毛ぎらいする民族でもなかった。むしろそれらの人たちをよろこび迎えた早い歴史をさえ持っていた。シナ、インドは知らないこと、この日本の関するかぎり、もし真に相互の国際の義務を教えようとして渡来した人があったなら、よろこんでそれを学ぼうとしたに違いない。また、これほど深刻な国内の動揺と狼狽《ろうばい》と混乱とを経験せずに済んだかもしれない。不幸にも、ヨーロッパ人は世界にわたっての
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