対する親しみの力、貴賤《きせん》貧富《ひんぷ》の外にあるむなしさ、渋さと甘さと濃さと淡さとを一つの茶碗に盛り入れて、泡《あわ》も汁《しる》も一緒に溶け合ったような高い茶の香気をかいで見た時は、半蔵も寿平次もしばらくそこに旅の身を忘れていた。
母屋《もや》の方からは風呂《ふろ》の沸いたことを知らせに来る男があった。七郎左衛門は起《た》ちがけに、その男と寿平次とを見比べながら、
「妻籠《つまご》の青山さんはもうお忘れになったかもしれない。」
「へい、手前は主人のお供をいたしまして、木曾のお宅へ一晩泊めていただいたものでございますよ。」
その男は手をもみもみ言った。
夕日は松林の間に満ちて来た。海も光った。いずれこの夕焼けでは翌朝も晴れだろう、一同海岸に出て遊ぼう、網でも引かせよう、ゆっくり三浦に足を休めて行ってくれ、そんなことを言って客をもてなそうとする七郎左衛門が言葉のはしにも古里の人の心がこもっていた。まったく、木曾の山村を開拓した青山家の祖先にとっては、ここが古里なのだ。裏山の崖《がけ》の下の方には、岸へ押し寄せ押し寄せする潮が全世界をめぐる生命の脈搏《みゃくはく》のように、間
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