杆《てこ》でも動かない巌《いわ》のような権幕《けんまく》で。」
 これらの七郎左衛門の話は、半蔵にも、寿平次にも、容易ならぬ時代に際会したことを悟らせた。当時の青年として、この不安はまた当然覚悟すべきものであることを思わせた。同時に、この仙郷《せんきょう》のような三浦半島の漁村へも、そうした世界の新しい暗い潮《うしお》が遠慮なく打ち寄せて来ていることを思わせた。
「時に、お話はお話だ。わたしの茶も怪しいものですが、せっかくおいでくだすったのですから、一服立てて進ぜたい。」
 そう言いながら、七郎左衛門はその茶室にある炉の前にすわり直した。そこにある低い天井も、簡素な壁も、静かな窓も、海の方から聞こえて来る濤《なみ》の音も、すべてはこの山上の主人がたましいを落ち着けるためにあるかのように見える。
「なにしろ青山さんたちは、お二人《ふたり》ともまだ若いのがうらやましい。これからの時世はあなたがたを待っていますよ。」
 七郎左衛門は手にした袱紗《ふくさ》で夏目の蓋《ふた》を掃き浄《きよ》めながら言った。匂《にお》いこぼれるような青い挽茶《ひきちゃ》の粉は茶碗《ちゃわん》に移された。湯と水とに
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