田入門のこころざしを果たし、江戸の様子をも探り、日光の地方をも見、いくらかでもこれまでの旅に開けて来た耳でもって、七郎左衛門のような人の話をきくこともできた。
半蔵の前にいる七郎左衛門は、事あるごとに浦賀の番所へ詰めるという人である。この内海へ乗り入れる一切の船舶は一応七郎左衛門のところへ断わりに来るというほど土地の名望を集めている人である。
古風な盃の交換も済んだころ、七郎左衛門の家内の茶菓などをそこへ運んで来て言った。
「あなた、茶室の方へでも御案内したら。」
「そうさなあ。」
「あちらの方が落ち着いてよくはありませんか。」
「いろいろお話を伺いたいこともある。とにかく、吾家《うち》にある古い系図をここでお目にかけよう。それから茶室の方へ御案内するとしよう。」
そう七郎左衛門は答えて、一丈も二丈もあるような巻き物を奥座敷の小襖《こぶすま》から取り出して来た。その長巻の軸を半蔵や寿平次の前にひろげて見せた。
この山上の家がまだ三浦の姓を名乗っていた時代の遠い先祖のことがそこに出て来た。三浦の祖で鎮守府《ちんじゅふ》将軍であった三浦|忠通《ただみち》という人の名が出て来た。衣笠
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