蔵さんはため息ばかりついてるじゃありませんか。」
「でも、君には事務の執れるように具《そな》わってるところがあるからいい。」
「そう君のように、むずかしく考えるからさ。庄屋としては民意を代表するし、本陣問屋としては諸街道の交通事業に参加すると想《おも》って見たまえ。とにかく、働きがいはありますぜ。」
 囲炉裏ばたの方で焼く小鳥の香気は、やがて二人のいる座敷の方まで通って来た。夕飯には、下女が来て広い炬燵板《こたついた》の上を取り片づけ、そこを食卓の代わりとしてくれた。一本つけてくれた銚子《ちょうし》、串差《くしざ》しにして皿《さら》の上に盛られた鶫《つぐみ》、すべては客を扱い慣れた家の主人の心づかいからであった。その時、半蔵は次ぎの間に寛《くつろ》いでいる佐吉を呼んで、
「佐吉、お前もここへお膳《ぜん》を持って来ないか。旅だ。今夜は一杯やれ。」
 この半蔵の「一杯」が佐吉をほほえませた。佐吉は年若ながらに、半蔵よりも飲める口であったから。
「おれは囲炉裏ばたでいただかず。その方が勝手だで。」
 と言って佐吉は引きさがった。
「寿平次さん、わたしはこんな旅に出られたことすら、不思議のよう
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