り懐手《ふところで》して見ても居られずサ。まだそれでも、斯うして釣に出られるやうな日は好いが、屋外《そと》へも出られないやうな日と来ては、実に我輩は為《す》る事が無くて困る。左様いふ日には、君、他に仕方が無いから、まあ昼寝を為ることに極《き》めてね――』
 至極真面目で、斯様《こん》なことを言出した。この『昼寝を為ることに極めてね』が酷《ひど》く丑松の心を動かしたのである。
『時に、瀬川君。』と敬之進は酒徒《さけのみ》らしい手付をして、盃を取上げ乍ら、『省吾の奴も長々君の御世話に成つたが、種々《いろ/\》家の事情を考へると、どうも我輩の思ふやうにばかりもいかないことが有るんで――まあ、その、学校を退《ひ》かせようかと思ふのだが、君、奈何《どう》だらう。』

       (六)

『そりやあもう我輩だつて退校させたくは無いさ。』と敬之進は言葉を続けた。『せめて普通教育位は完全に受けさせたいのが親の情さ。来年の四月には卒業の出来るものを、今|茲《こゝ》で廃《や》めさせて、小僧奉公なぞに出して了《しま》ふのは可愛さうだ、とは思ふんだが、実際止むを得んから情ない。彼様《あん》な茫然《ぼんやり
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