つて、『是《これ》がもし事実だと仮定すれば――』
『事実? 到底《たうてい》其様なことは有得べからざる事実だ。』と銀之助は聞入れなかつた。『何故と言つて見給へ。学校の職員は大抵|出処《でどこ》が極《きま》つて居る。君等のやうに講習を済まして来た人か、勝野君のやうに検定試験から入つて来た人か、または吾儕《われ/\》のやうに師範出か――是より外には無い。若《も》し吾儕の中に其様《そん》な人が有るとすれば、師範校時代にもう知れて了ふね。卒業する迄も其が知れずに居るなんてことは、寄宿舎生活が許さないさ。検定試験を受けるやうな人は、いづれ長く学校に関係した連中だから、是も知れずに居る筈が無し、君等の方はまた猶更《なほさら》だらう。それ見給へ。今になつて、突然其様なことを言触らすといふは、すこし可笑《をか》しいぢやないか。』
『だから――』と準教員は言葉に力を入れて、『僕だつても事実だと言つた訳では無いサ。若《もし》事実だと仮定すれば、と言つたんサ。』
『若《もし》かね。はゝゝゝゝ。君の言ふ若は仮定する必要の無い若だ。』
『左様《さう》言へばまあ其迄だが、しかし万一|其様《そん》なことが有るとすれ
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